引き続き、ミッキーが初めて話した言葉が、なぜ"Hot Dogs!"だったのか、そこに迫っていきたいと思います。
ショーの場で食べるホットドッグ
ミッキーが初めて言葉を話した短編映画"Karnival Kids"では、ミッキーはショーのお客さんにホットドッグを売り歩く人として出演しています。
映画をみるときにポップコーンを食べるように、ショーを見るときにホットドッグを食べるというのが人気だったのでしょうか。
この映画が上映されたのが1929年。この時代、アメリカでは、安く、労働者に食べ物を提供するいわゆる「ストリート・フード」と呼ばれるものが流行ったのだそうです。これ以前、ホットドッグは、「屋台」形式で売られているのが主流だったそうですが、この頃になると、ホットドッグを売る「フードスタンド」が登場し始めたといわれています。
ホットドッグの人気
ホットドッグは、当時の社会情勢と相まって、人気を博し、だんだんとアメリカの人々にとっての「ソウル・フード」となってきます。アメリカの人々にとっての「アイデンティティの象徴」であるとも言われています。
ホットドッグの人気の訳として挙げられているのは、「安さ」「食べやすさ」「おいしさ」です。一つ5セントから買えるという手軽さと、パンにソーセージを挟んだだけで、手に持って食べられ、味もおいしいとなれば、確かに人気が広がるのはわかります。(トッピングしすぎて、ボロボロこぼして食べづらかったのは、自分のせいですよね(笑))
"Karnival Kids"では、ショーのお客さんに対してホットドッグが売られていました。その食べやすさから、ホットドッグ片手にショーをみるというのが、定番だったのでしょうか。
何かを観ながら、ホットドッグ
ホットドッグの生まれたきっかけについては、諸説あるそうです。その中でもとくに有名なのが、「ハリー・モズリー・スティーヴンズの神話」と呼ばれているものだそうです。
簡単に書くと、野球場で売り歩きをしていたハリーは、野球場があまりにも寒いため、観客があたたかいものを欲していると察し、ソーセージをパンにはさんで売ることを思いついたところから、ホットドッグが広まっていったのだそうです。
ここで注目したいのが、野球観戦の時にホットドッグを食べるという考え方があったというところです。何かを観ながらホットドッグを食べるというスタイルがあったところからも、"Karnival Kids"の映画の中のように、ショーを観ながらホットドッグを食べるというスタイルは、自然なものだったのだと考えられます。
この時点で考えられるのは、"Karnival Kids"が公開された1930年ころ、ホットドッグは流行の食べ物としてアメリカ国中で広まっていた中、その安さとおいしさ、そして食べやすさから、野球やショーなどを観るときに食べられるものとして広まっていったということです。
なので、ミッキーがあの映画の中で、あらゆる食べ物の中から「ホットドッグ」を売り歩く役をしていたことは納得できます。おそらくですが、ショーが開かれるというストーリーの中で、ミッキーが売り子の役になると決まったときに、自然とホットドッグが出てきたのではないかと推測できます。
これで、すこーしはっきりしたのでしょうか。(なんとなくわかったような、分からないような・・・・。)ミッキーが発した最初の言葉がなぜ"Hot Dog!"だったのか。そこには、アメリカの人々にとってのホットドッグの存在の大きさがうかがえます。
参考文献:ブルース・クレイグ『ホットドッグの歴史』(原書房、2017)